普段は車でしか通ることのない福岡都心の大動脈、渡辺通り。スタート地点の青い計測マットを確実に踏みつけて、いざ始まった福岡マラソン2016。しかしその大動脈をもってしてもだんごスタートになるほどに多いランナーの群れ、群れ、群れ。
大丈夫、問題ない。スタートしてからの5kmはほぼ自分の思い通りには走れない、という”マラソンあるある”はすでにのぼる、織り込み済み。
「最初の5kmはウォーミングアップ」そう自分に言い聞かせて「早く前に行きたい!」を精一杯抑え込みます。
当初のぼるが思い描いた、サブ4必達のためのスタートから5kmのラップはここでも書いたように、27’30″。で、実際はどうだったかというと、
写真:応援Naviより ※注:西戸崎のぼるはあくまでランネーム
その差9秒の貯金。これは上々の出だし!初フルマラソンとなった2月の淀川で経験したスタート時の混乱を学習したうえでのナイススタート。スタート直後にキロ6分程度かかったノロノロ運転も、5kmまでにほぼイーブンに戻しておくことで、それ以降焦らないで済むようにしておこうという策はこの時点で成功です。
そしてのぼる通過から約20分、effect RUN TEAMはあいにゃを先頭に次々無事に5km地点を通過していきます。さすがにこの時点ではまだまだみんな笑顔も余裕!
9時7分25秒 あいにゃ通過時のそれぞれの位置。100mほど離れてふじかな、そこからまた200mほど離れて矢野由希子、さきちょり、山口瑠香と続きます。
effectスタッフ全員のグループLINEでは、伴走小森より「あいにゃ爆走中!」という悲鳴が早速届いて心配になるもこの笑顔!
5km最後尾はさきちょりと山口瑠香が同時に。最後尾とはいえ全然余裕!
フルマラソン組の最後が5kmを通過してほぼすぐ、ファンランゴールにはeffectファンラン組も全員無事にゴール!
ゴール後は声をかけられて写真撮影に応じる余裕も。ファンランは楽しんでなんぼです^^ /
そんななか…
のぼるが早々に10kmを通過です。
プラン上では55分ジャストでの通過を予定していたので、約30秒の貯金!飛ばしすぎず遅くならず、まずまずの10kmです。いける、サブ4いける。
そしてのぼる通過から約24分後、5kmと同じくeffect RUN TEAMはあいにゃが先頭で10kmを通過!10kmにもなると徐々にそれぞれの間隔が開いてきます。
あいにゃ早すぎて撮影追いつかず…
のぼる、15km通過。プラン上では1時間22分30秒、実際には1時間21分32秒。ということでこの時点で貯金をちょうど1分にしています。この「予定ペースより若干早い」というペースが後半どう響いてくるか、走りながらすでに心配になりつつも、この貯金を崩すことの怖さからペースを落とせないのぼる。まだ15km。
9:50、effectスタッフのグループLINEへ伴走中の小森から「あいにゃペースが落ちはじめました。」との一報。10:00、1人遅れが目立ち始めた山口瑠香が膝に強い違和感とのことで「救護にてテーピング」との一報。
なんだかこのあたりから、フルマラソンの怖さがメンバーそれぞれを襲い始めます。。
のぼる、20km通過。
予定1時間49分35秒に対して、実際は1時間48分58秒で貯金は約30秒。「ここからペースをあげる!」と予定していた20km地点ですでに貯金が減り始めています。たしかに、試走の時には感じなかったけど、九大まで延々と続くなる緩やかな坂道と「あれ?折り返し地点まだ?」という『登りきったのにまださきあるんかい地獄』で少し心が折れかけています。なるほど、きたか、ついにきたか、ここからが本当の勝負、サブ4への恐ろしいまでの障壁かと、正直かなりの不安が襲ってきます。やばいやばいよ。
ほぼ時を同じくしてeffect RUN TEAMの先頭あいにゃが15km地点を通過!二番手のふじかな以降さきちょりまでが固まるも、膝の具合が気になる最後尾の山口瑠香のみ大きく差が広がります。
15km通過のあいにゃ。と”おい小森”。
15km通過のふじかな。おそらくかなりきつさを感じ始めているのにこの笑顔。さすが!
15km通過のさきちょり。こちらも力強い走りで撮影に応じてくれます!
さて、福岡マラソンのコースは”折り返し”とはいいつつもスタートとゴールが別々の場所にあるので、先に走っているランナーとすれ違うポイントがほぼなく、唯一九大前の約2kmほどがそのすれ違いポイントとなっています。となればやはり「すれ違いたい」。すれ違って「もうちょっとで折り返しだから!頑張って!」などと偉そうな声かけたい。
ところが…
あと数百メートル!!!!ざんねん!!!ということですれ違い願望は果たされずにのぼるは今津運動公園へ向けて曲がってしまうのでした。。。
のぼる、25km通過。2時間16分15秒予定のところ、2時間16分48秒。ここでついに借金…しかもマイナス30秒!ペースも落ち始め、体が重く感じ始めており、このまま残り17kmもいけるのかすでに不安で頭のなかがやばいことになっています。
…とはいえかすかな希望は予定プランが4時間ジャストではなく、3時間48分という余裕をもたせた設定になっており、借金12分まではなんとか望みがあるということ。すでにそちら側を頭におきだしたこの時点で、かなりネガがはじまっています。。
一方そのころeffect RUN TEAMのメンバーたちは続々と20kmを通過し、『すれ違いホットスポット』に密集しています!羨ましい!(とはいえそれどころではないでしょうが…)
ちなみに最後尾の山口瑠香はこの時点で1kmペースが9分50秒に…。次の収容関門である19.8km地点(11:44)までは約4km、このままのペースだとギリギリ突破はできそうだけどかなり危ない状況に。。
10:55 矢野由希子 20km通過。まだまだ大丈夫!
のぼる、30km通過。想定2時間42分55秒のところ、2時間45分46秒。
25kmからの5kmで2分半も借金が膨らみます…。この時点での1kmペースは6分、残り12kmと考えるとサブ4は厳しい状況に…。海釣り公園など、海沿いを走る気持ちの良いコースが続いたはずなのに、全く堪能できず。ただただ「止まらない」ということだけなんどもなんども言い聞かせながら走ります。この後に地獄が待っているとも知らず。
あいにゃ、25km通過。
写真を見ながら振り返っているとほとほと感心させられるのがメンバーの笑顔。この時点であいにゃは練習中に痛めた膝がもう相当やばいはず。笑顔なんてつくっている場合でもないはずなのに、あいにゃだけじゃなく、みんな笑顔で沿道のスタッフに応えてくれている。プロだなぁ。さすがだぁな。
一方その頃のぼるは32km地点。通称『北崎地獄』に飲み込まれていました。福岡マラソンの参加経験者の誰もが口を揃えて警告を発してくる難所、それが『北崎地獄』。30kmを越えて海沿いからはずれ、一路山の中へ、そう、すげーー峠道。まじなんなんバカ言っちゃいけんわなんなんまじアホなん、なんなん。ありえんやんこれ、これありえんやろ。って、ずっと言ってた。それが登りと下り、約3kmくらい延々と続きます。
ただしそこは腐っても「山の神」のぼる。限界ギリギリとはいえキロ6分ペースを意地でも維持して進みます。
そんな中、effect某スタッフの実家が32km地点に程近く、そこにご家族みんなで応援に来ているとの知らせを耳にするのぼる。ちなみにこの某スタッフはちょうど1年前に西戸崎のぼるの『56km祈願ラン』で祈願した張本人であり、その後無事に生まれてきた赤子ももうそろそろ1歳になろうとするわんぱくざかりのかわいいざかり!ここはなんとしてもかっこ悪い姿はみせらんない!のぼるかっこつけないと!ということで精一杯かっこつけて走ります。
詳細はAFRO FUKUOKA 『西戸崎のぼるの”AFRO副編集長へ届け!”糸島祈願マラソン完走スペシャル』をごらんください!
……が、なかなかいません。。その某スタッフを見つけたら、その後さすがに一回止まってみてもいいかもしれない、一度止まってみる勇気もあるかもしれないなどと思っていたのにいない。いないからいつまでたっても止まれない。探す、止まれない、探す、止まれないを繰り返すのぼる。そしてついに!
せいいっぱいかっこつけてるけど、頭の中では大きな声で「ここ32kmちゃう!33kmや!1kmは誤差違う!」と言っています。とはいえここは北崎地獄の出口、そう、おかげさまで北崎地獄をまさかの「かっこつけ」でなんとかクリアしたのでした。ありがとう!!
ふじかな、そして矢野由希子25km通過。1km後方にはさきちょり続きます。
心配していた最後尾山口瑠香は時を同じくしてちょうど半分、21km地点通過。キロペースは11分を超えています、というかこの時点ですでに歩く力はなく、ただ歩くのみ。一歩一歩進むのみの状況に。。次の収容関門は24.8km地点で12:32、残すところ1時間で4km以上進むとなると、キロ11分はせめて維持しなくてはなりません。フィニッシュ地点に移動してきたファンランメンバーやeffectスタッフの間に緊張感が漂います。
のぼる、35km通過。想定3時間9分35秒のところ、3時間15分52秒。借金は6分に…。
とはいえ、ついに二見ヶ浦に到着です!北崎地獄をなんとかクリアし、風光明媚なサンセットストリート。ここからあげていけばまだまだ借金は6分、なんとかなるはず!
と、言いたいとこですが、35kmを越えたあたりでのぼるの足がついに止まります。。そして止まる、走る、止まる、走るがいつしか、「走る」ではなく「歩く」に変わります。二見ヶ浦を過ぎた36kmあたりの緩やかな上り坂も地味に全身へ確実なダメージを与えていきます。ゴールまで6kmちょっと、ここからキロ5分45秒くらい維持すればまだまだサブ4は可能。それにキロ5分45秒なんて、軽口叩きながらでも走れるくらい、余裕のペースと胸を張って言えるくらい、その程度は走り込んできたはずなのに、その時点でのキロ5分45秒はもう絶望的ペース。「無理だなぁこれは」と、この時心がおれる音が聞こえました。そして言い訳を考え始めるのでした。
一方で最後尾の山口瑠香はこの時22km地点。ペースは既にキロ13分を超えています。おそらく山口さんも自分と問いかけあっていたことでしょう。
マラソンはスポーツであって義務ではもちろんありません、無理して自分の体を痛めつけるなんて本末転倒。プライドと、意地と、いろんな要素が頭の中で絡み合って、シナプスが行き場を失くして彷徨いはじめます。。
あいにゃ、北崎地獄突入中。のぼる、39km地点通過。
この頃、ドラマのクライマックスに向かうランナー達はもちろん、早朝からバタバタと裏方で走り回ってきたスタッフ達にも緊張感がみなぎります。。特に、のぼる特製のタイムテーブルに漏れていた大きな穴『SNSに利用できるゴールの瞬間写真はどうするの?』問題が持ち上がります。ゴール地点にはカメラマンがスタンばってるものの、それはあくまで報道用カメラで、速報ですぐに使えるものではなく、リアルタイム実況するには簡易的でも写真が必要。さぁどうする?ということで、後で見直したスタッフ間グループLINEでは、この時間帯で『もうすぐのぼるがゴールしますよ!』『誰かいけないの?』『私こっちやってるんで無理めです!』『もともとどうだったの?』『いや、もともとそこに配置してません(のぼるが!)』『はぁ?!バカなの?(のぼるが!)』的なやりとりが面白い。でも結局ファンランの伴走をしていた2人がゴール地点へ向かい、万全の体制を整えたのでした。ごめんね!!
さて、ここからは一人一人追いかけます。まずは12:08 のぼる40km通過です。
想定3時間36分40秒のところ、3時間46分41秒。…借金はさらに膨らんで10分。
25km地点でも触れましたが、のぼるはもともとグロスでのサブ4(自分がスタートラインを踏んだ時間からではなく、大会全体の号砲がなった瞬間からのタイム)を達成するために3:59:59ではなく、余裕をみて3:48:33目標を設定していました。なので目標とする想定タイムから11分30秒程度の借金であればなんとかネットでのサブ4(スタートラインを踏んだ時間からゴールするまでのタイム)の可能性がまだ残ります。とはいえ残り2.195kmを13分20秒でゴールしなければなりません。グロスとなれば、そこに約1分30秒余裕が必要なのでさらにひいて、12分以内でのゴールが求められます。
この時ののぼるのペースはキロ6分9秒。
このままではグロスどころかネットも微妙です。
的なことを走りながら、止まりながら、左腕のGARMINを見ては足りない力で右脳を振り絞り計算し続けます。
そして左脳ではずっと「サブ4を達成できなかった言い訳」を考え続けます。
ただ、そこはやっぱり根っからの文系、そうそうに答えを出したのは左脳の方でした。
私が出した答えはそう、「残念だったけど十分頑張った」。これでした。次の熊本城で達成できればいい、まだまだ自分には高い壁だったんだなぁと。
と、その時背後からすげーうるさい女性が大声でせまってきます。
「まだまだいけるよー!」「4時間きれるよー!」「ここまで頑張ってきたのに諦めるのーーー!?」「ほらー!顔上げてほらーー!」
正直な話し「まじすげー熱くてうざいやつきたわー。」と思ってましたごめんなさい。
どんどん迫り来るこの声の主、実は「4時間」のペースランナーだったのです。
ペースランナーとは、一定の時間でフルマラソンを走ることを約束している運営ランナー。なので、このランナーがゴールする時間、それはイコール4時間なわけです。
これまで右脳の中でヴァーチャルに戦ってきたサブ4の幻影が、今ここに実体として現れたわけです。
この人より先にゴールすればそれはイコール4時間以内、そうサブ4達成を意味します。
残り2kmの時点でペーサーに並ばれたのは、これぞ神が落とした一本の蜘蛛の糸!とみたのぼるは、ここから猛然とペースをあげるのでした。
容赦ないペーサーの叱咤激励が飛び交う中、のぼると同様に息を吹き返したサブ4に飢えた多くのランナー達は、いつしかペーサーの周りをぐるりと囲み、ふるい落とされまいと必死にくらいつきます。しかしそこまでで身体中のエネルギーを使い果たし、筋肉をいじめぬいたランナー達、バタバタと墜落。。自分も堕ちれば楽になる。堕ちてもじゅうぶん4時間頭でゴールできる。それだって立派なタイムだ。何も悪くない。自分でかっこつけていい回っていただけのこと。えへへてへへで許してもらえるさ。もうやめよう。
最後、なかなか見えないゴールを眼で必死に探しながら、集団となったサブ4狙いのランナーたちに埋もれてしまい、ここぞとペーサーより前にいく力を振り絞ることができず、太ももの筋肉がピクピク痙攣して悲鳴をあげます。ただ、ただひとつ折れた心にくすぶっていた「意地」は、この大会がひっそり祈願ランであったということ。
実はのぼるの第二子が福岡マラソンから5日後に予定日を控えており、ここはひとつ有言実行のかっこいいお父ちゃんとして偉そうに迎えてあげたいと密かに思っておりまして、なんだろう、その気持ちがゴールに近づくに連れてグングン存在感を増していきます。あと少し、あと少しだけ死ぬ気で頑張ればいい。そんな時に突然100mほど先にぼんやりと姿を現わしたゴール、そして3時間59分を過ぎているタイム表示…
その瞬間、まさかのタイミングで目の前からゴールまで一直線の空間ができました。残り100m、空いたなら行くしかないと、最後は火事場の馬鹿力でただただダッシュです。ほんとにダッシュ。泣きながらダッシュ。ボロ泣きダッシュ!実はのぼる、学生の頃から短距離はめっちゃ自信がありまして、この時ばかりは無呼吸運動。ぐっと息をとめて一気に走り抜けました。
グロスタイム 3時間59分28秒。
ということで、今でも信じられないのですが、のぼる、サブ4です。
最後、キロ6分が精一杯だったのぼるも、ラスト2kmはまさかのキロ5分をきるペースで猛然と追い上げていました。
写真は同じくサブ4を達成し、ゴールエリアでたまたまばったり会って互いに健闘をたたえあえたeffectコラムニストでもあるアイズの福島さんと。
さて、のぼるがゴールの余韻に浸ってる中、グループLINEに残念なお知らせが届きます。
のぼるゴールとほぼ時を同じくして、25km地点を通過したばかりの山口瑠香がリタイアです。フルマラソンメンバーとしては最年少、もちろん初のフルマラソン。専門学校に通いつつモデルの仕事もしつつで、なかなか練習もできず。。
マラソンに限らずスポーツというのは「まぐれ」や偶然がなく、特にマラソンはビギナーズラックなんてことがないシビアなスポーツ。100日間という限られた期間の中での挑戦となったことで、今回は厳しい大会になってしまいましたが、「練習時は10km以上走ったことがない。」という不安の中で間違いなくハーフマラソン以上の距離をファーストアタックで走破したのだからそこは胸をはってもいいと思います。お疲れ様でした!
リタイア直前、25km地点での様子。それでもこの笑顔!
ちなみにこの写真に写っているイケメン伴走ランナー髙田も伴走とはいえフルマラソンは初。スポーツ推薦で大学まで進むという強烈なスポーツポテンシャルを秘めていることにより突然抜擢されたわけですが、この後彼は誰の伴走をするでもなく、ただ1人、ゴールに向かうことを選択したのでした。おとこ!
先頭メンバーの伴走ランナー小森から届くLINEにスタッフがざわつきます。これまで一度も先頭を譲ることなく、黙々とゴールを目指して走ってきたあいにゃ。
彼女が早々にゴールしたいと願うのには様々な理由があったことでしょうが、何より大きな理由だったのがこれ。
週4~5日も走り込み、時には20kmの中距離ランも。膝を痛めつつも前を向いた先にはフィニッシュ地点のステージがありました。声優やタレントとして活動しつつ、『巫女子』というダンスグループのメンバーでもあるあいにゃ。この日は同じく巫女子のメンバーのうち3人がファンランに、フルマラソンにはあいにゃの他さきちょりこと藤田早希も出走しています。
フィニッシュ地点のステージ開始予定時刻は14時40分。スタートからほぼ6時間後ということを考えると、休憩を含めて5時間を切るタイムでゴールしておきたいところ。というかそもそもフルマラソンを走りぬいた後に20分も激しいダンスを踊れるのかということも大きなチャレンジではありますが、おそらくこの時あいにゃは体だけでなく、頭も、感情も、いろいろ迷走して大変なことになっていたことと思います。
そして冒頭の小森からのLINE。35km地点までは順調に、6分半〜7分のペースで進んできたあいにゃですが、ここに来てペースががくんと落ち、キロ10分を超えています。そして12:40、終始あいにゃの伴走をしている小森からまたLINEが届きます。
後ほどわかったのですが、本当はこの時あいにゃがいたのは37km手前。残り5kmでついに地面にへたり込んでしまうあいにゃ。
既にこの時、ファンランを終えフィニッシュ地点まで移動してきていた巫女子のメンバーたちは控え室でずっと、スマホで応援naviを起動してあいにゃはじめメンバーの動きを追います。巫女子ではダンスだけではなくMCもこなすあいにゃ。あいにゃなしのステージとなるかもしれないという不安と、なによりもあいにゃやさきちょりと一緒にステージに立ちたい。願うようにスマホから目を離さないメンバー達と、これまでずっと追いかけてきたスタッフ達もハラハラが止まりません。そしてここで
という『誤報』が舞い込み、それが『誤報』とわかるまでの数分の間、effectスタッフの間はもちろん、巫女子メンバーの間に何も言えない絶望感が走ります。ここまで来たのに!ここまで頑張ったのに!残り2kmなのに!
絶望から歓喜へ。巫女子メンバーは控え室を飛び出してフィニッシュ地点へ向かいます。
フィニッシュ地点では多くの応援の方で沿道は埋まり、なかなか近くまでは進めませんが、巫女子メンバーがフィニッシュゲートに近づいたまさにその時、
グロスタイム 5時間12分53秒。
「無事」と言うには無理があるかもしれない、ボロボロの状態ではありますが、駆けつけた巫女子メンバーの見守る中、最後は確実にゴールまで走り抜けました!
走り抜けた後もまさかのこのポーズ!
そしてそのまま車椅子に乗り、救護ブースへ。その後しばらくスタッフも状況を把握できず、救護からの戻りを待つしかありません。
ただ、おそらくステージは無理だろうと、それに伴走ランナーとしてこの日まだ出走中だった事務所のマネージャーからも「本人は出たがるだろうけど控えさせてください。」という連絡。そらそうだ、フルマラソン完走は思いのほか体へ大きなダメージを残します。筋肉量の少ない女性はなおさらのこと。ここで無理をして体をいじめる必要はない。もう充分僕らはあいにゃの走りに感動させてもらったし、あとはゆっくり体を休めてください。お疲れ様でした!!
あいにゃが42km地点を超え、フィニッシュゲートにせまるころ、ふじかなが40km地点を通過します。
この『effect』というメディアを立ち上げる際、勝手にメンバーとして一番最初にイメージしたのが「ふじかな」こと藤田可菜でした。
元陸上部という相性のよさはもちろん、なぜだろう、彼女ならきっとポジティブにこのプロジェクトに参加してくれるという確信も。とはいえ最近ではCMをはじめ、テレビ番組でも活躍し、古い言い方をすれば「ブラウン管の向こう側」の人というオーラもまとい出した彼女のこと、さすがに「走ってる場合じゃないわ!」とか言うかなあなんて1mm程度は思ってましたが、やっぱりふじかなは私が思っていたとおりのチャレンジャーでした。
しっかりとこの日に備えて「コソRUN」してきたであろう彼女には、「完走」という目標はたやすいのかななんて思いましたが、やはりそこは初マラソン。スタート時の混乱からマイペースを作ることができず、思い通りにいかぬままアクセルを踏み込めない、予定よりスローなペースが続く厳しいランでしたが、最後までコツコツと走り続けます。
30km地点通過時。
35km時点通過時。ここにきてもふじかなはふじかなのまま。
レース中、ペースのアップダウンのあるあいにゃに次ぐ二番手でコツコツ前進し、スタッフ間では何度も「そろそろふじかなが抜くかもしれない」「ふじかなせまってます」などのトークが交わされ、どこかで「きっとふじかなは大丈夫」という安心感が漂っていたのだと思います。後々見返しても「ふじかなやばいかも!」みたいなトークがひとつもない。だからこそ「まさかリタイアか!?」となり、バックヤードがバタバタしてる間に訪れたあいにゃのゴールからわずか14分後にもかかわらず、ふじかなのフィニッシュをとても落ち着いて僕らは迎えることができた。
グロスタイム 5時間26分46秒
今回、effectとしてはフルマラソンに3名の伴走ランナーが付き添いました。先頭と最後尾と中間に1名ずつ。そんな中、最後まで伴走ランナーがつかず、単身ゴールまで向かったのはふじかなただ1人。僕らはきっと『優等生にみえがち』なふじかなに甘えていたのだと思います。
ゴール後、自らの足で控え室まで戻り、マイペースに身支度を整えるあたり、終始さすがふじかな!と感じ入り、effect RUN TEAMの顔としての責務をしっかりと果たしてくれたことに感謝!
…なんて思っていましたが、ゴールからわずか1時間後、彼女は今回のレースへの悔しさを語り、「次」をはっきりと明言。僕らは気づいてあげられなかったけど、チャレンジャーの彼女のこと、コツコツ進んでいるように見えてそこには計り知れない葛藤があったことでしょう。effectのメインをはり、8.5の就任式ではセンターで大会公式サポーターの任命書を受け取り、ウェブサイトでは常にふじかながトップページ。理想とする思い描いたフィニッシュに向けて、まだまだ彼女はチャレンジを続けたいと、「優等生」ではなく「負けず嫌い」の顔をしたふじかながそこにいました。
とはいえまずはじっくり体を休めてください。そして次、僕らは「負けず嫌い」ふじかなのチャレンジを楽しみにしています。お疲れ様でした!!
ふじかなから遅れること20分、フィニッシュエリアへ矢野由希子が近づいてきます。
35km地点では既に歩いてしまう状況でした。
突然ですが、世の中には「オブラートに包む」という処世術があります。みなさんももちろんご存知のはず。「ノー」とは言わない日本人、特に私たち日本人はなかなか本音を言わずに「マイルドに」「おだやかに」ことを進めようとします。よね?ところが、矢野由希子はそれがない。ここで「良いも悪いも」とつけたくなるけど「良い」こともないなぁというほどに常に本音で会話してくるので褒めてるわけではないけれど、本音が見えない人ばかりの世の中では、彼女のような人がいると逆に安心感がある(わけではないだろうけどもう慣れた)。
今回のプロジェクトも声をかけた当初は笑顔のまま「嫌だ」「ない」「無理」「頑張れん」「完走できん」「すかん」を連発。しかしその割に毎週一度開催していたeffectチームの合同ランにはほぼ毎回参加。合同ラン以外にもナイキプラスでたまに伸びる距離。ぶつぶつ言いながらもしっかりと走る姿を僕らに見せてくれていたので「なんだかんだいいながらもしっかり考えて取り組んでるんだなぁ」と思うことに。さらには次第に10kmの帰宅ランをするまでに。
そして迎えた今日、「今まで筋肉痛を味わったことがない」「風邪をひいたことがない」と言い切る規格外の彼女の体がフルマラソンのゴールへ向けて特に飛ばすわけもなく、表情もそう変わらず、いつもの変わらない矢野由希子スタイルで走り続けます。
グロスタイム 5時間51分15秒
「まさか」と言っちゃうのはキャラの話しで、実際の日頃の練習を見ていると何も不思議のない立派なゴールでした!ゴール後、彼女はこんなことを言っています。
「全然きつくなかったよ。ただ足が痛いだけ。最後まで走る楽しさは見出せなかったよ。」
おい、このてめえ、おい。まぁいい、まぁいいとしよう完走したし。きっと、きっと彼女は「本音」を言っちゃうタイプではない、そうでなくて真逆なんだな、天邪鬼なんだな。そうかそうか、そうかそうか…お疲れ様!!
矢野由希子から遅れることわずか3分、さきちょりこと藤田早希がフィニッシュエリアへ。
レース中、ずっと力強い笑顔を見せてくれていたさきちょり。
このレポートより先に、彼女は自身のブログでこう書いています。
本当に不安でしかなくて、路上で泣きながら最後のケアに行きました。(中略)誰かにこの不安を感情のままぶつけたかったけどそんなこと出来る性分ではないし、でも不安だし(中略)『不安すぎて泣きそうです』てだけ2人に連絡しました。そしたらね、『今を生きる!活きる!』って言葉と『逃げられないので腹くくって楽しもう』って言われた。結局眠れず睡眠3時間弱のあげく腹をくくれなかったんだけど…笑
まさかあの力強い笑顔の裏にそこまでの不安と緊張感を抱えていたとも知らず。25km以降は伴走もはずれ、単身ゴールまで着実に一歩一歩進んできました。
そしてまたさきちょりもあいにゃと同様巫女子のメンバー。心のどこかでステージへの思いもあったことでしょう。35kmを超えたあたりで、普通ならみんなそのあたりから一様にペースが落ちるものの、さきちょりは後半もペースを守り、一時は三番手にも大きく間を離されて、僕らスタッフたちも正直大丈夫かな?と思ったりもしましたが、最後はグングンその差をつめてフィニッシュエリアへ到着です。
グロスタイム 5時間54分3秒
ゴール時間は14時14分。そう、巫女子のステージスタンバイまで15分を切っています。
この時、ちょうど私はステージのために着替えを済ませた巫女子のファンラン組3人と、ステージへの移動を開始しました。あいにゃはゴール後一度見かけたけどステージなんて出られる状況でもないし、おそらく本人もかなり葛藤したと思うけど巫女子の衣装に着替えることなく控え室に向かっていました。さきちょりなんてもっとそう。ただ、ファンラン組のたっての願いで、せっかくステージスタートまでにゴールできたのだからせめてMCだけでもどうにかならないかと、ゴールしたばかりのさきちょりをステージまで連れて行こうとしたのですが、ゴールしたはずの
あせるのぼる。完走した多くのランナーでごったがえすフィニッシュエリアを探し回りますが、さきちょりの姿がありません。
せっかくステージスタート前にゴールできたんだし、なんとかしてMCだけでも、その声をステージ上から届けさせたいと焦りが募ります。。
その後、ステージ開始6分前に「さきちょりステージ前で合流!」との一報。
ほっと胸をなでおろし、のぼる他スタッフみんなもこの日、このプロジェクトの最終ミッションとなる巫女子のステージへと向かうのでした。
25km過ぎに残念ながらリタイアとなった山口瑠香に伴走していたイケメンサポートランナー髙田も、誰を伴走するでもなく、ただ1人ゴールを目指して走っていました。
最大で4番手のさきちょりと10km弱の差がつきながらもなんと、さきちょりから遅れることわずか12分でゴール!さすがのポテンシャルで一気に追い上げ、しっかりゴール!
途中「こいつ誰を伴走しとんのかね」的な目を向けられながらも、記録のつかない伴走ランナーにも関わらず、effect RUN TEAMのメンバーとして堂々の完走。
「山口瑠香さんの分も、僕が完走しないとと思いまして!」
…とは言ってませんが、そう言ったことにしようと思います。お疲れ様!!!
おもてなしステージ横の直前控え室では、衣装に着替えた巫女子のファンラン組と、満身創痍のまま着替えも出来ずにいたあいにゃ、ついさっきゴールしたばかりで歩くのもままならないさきちょりのフルマラソン組も合流。本人たちと事務所マネージャーのみがテントにてなにやら話し合っています。
effectスタッフの面々も、プロジェクトの最後を締めくくるこのステージの前に集まり、みんなを見守るスタンバイ。そして…
「伝説を作ってくる」
事務所のマネージャーも止める中、そう言って彼女はステージへあがっていったそうで、そしていつもと変わらないさきちょりらしいキレッキレのダンスを披露しています。
フルマラソンを一度でも走ったことのなる人ならばよくわかってもらえると思いますが、完走後にダンスを踊るなんて、もう気力以外のなにもなく、冗談を通り越してのぼるの目にも涙。
そして、MCだけでもと、ひとりマイクを握り観客席を盛り上げていたあいにゃも気づけば観客席に見当たりません…。
いました。ステージの上にあいにゃいました。
そう、まさかのあいにゃもたまらず参加。事務所マネージャーも苦笑いするしかなく、逞しい彼女たちの姿にのぼるの目にまた涙。
「マラソンなんて嫌で嫌で仕方がなかった。ただ、出るならなんとかしないとと思って今日、できる限りのことはしました。そして完走してみた結果、それでも”楽しかった!”とは言えないけど、マラソンの完走はこれからの私の人生の中で大きな力になることは間違いありません!だからやってよかったと思っています。チャンスをくれたみなさんありがとうございました!また来年、福岡マラソンが開催されるのであればぜひ今回は応援だけだったみなさんも参加してみてください!」
ステージの最後、あいにゃの言葉で我々effectの最初の大舞台となった福岡マラソン2016のプロジェクトは終了しました。
effectをスタートした当初、福岡マラソン2016までにやっておきたいことの半分もできないまま、この日を迎え、そしてあっという間にその日が終わりました。
あくまでアスリート視点ではなく、ランニングをカルチャーとして楽しみたい、楽しみましょう、というお題目で始めたeffectですが、思いの外旗をふったのぼるが素人すぎて、巻き込んだメンバーやスタッフそれぞれになんだか申し訳ないなぁという気持ちもありつつのこれまででしたが、まぁいいや、「よかった」と言ってくれたらそれでいいかと開き直ることにします。
ということで、effect立ち上げの大きな原動力となった福岡マラソン2016はこのように無事終了しましたが、せっかくだからeffectはまだまだ続きます。西戸崎のぼるという人格もまた、名残惜しいのでしばらく続けたいと思います。さて、次回僕らはどこを走るのでしょうか。そして誰が走るのでしょうか。ぜひお楽しみに。それでは長い長い記事におつきあいいただきありがとうございました!
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